2009-10-28

記者会見にネットユーザーが参入!

メディアのあり方に大きな影響を与える可能性があると期待される事態が出現したという意味で、大変興味深い記事を読んだのでご紹介しておきたい。

ネットユーザーが外務大臣に質問した「田中龍作ジャーナル」より引用


インターネットの動画ライブ中継画面にユーザーが書込みできる「双方向性」が売り物の『ニコニコ動画』。先月末から始まった外務省の記者会見オープン化以来、毎回大臣会見に出席しているが、27日の会見では岡田大臣にユーザーからの質問をぶつけた。

各省の大臣記者会見で視聴者からの質問が取り上げられるのは極めて異例だ。大メディアの記者たちで埋まる会見室は水を打ったように静まり返った。

約40分間続いた記者会見の終盤になって『ニコニコ動画』のディレクターが挙手し、外務省の三上正裕報道課長があてた。

質問に先立ちディレクターは「視聴者から電子メールで届いた質問を代読させて頂きます」とことわり、あくまでもユーザーからの質問であることを強調した。

質問:大臣は野党時代の早くから自らのサイトで動画配信をしてこられましたが、ニュース報道という点においてテレビとネットの大きな違いはどんな所にありますか?

大臣:私が(動画)配信をしてきたのは私の主張を多くの方に知って頂くために、私自身の考えが他の媒体を通すと「私の本意」とは違った伝えられ方をする。映像ですとそのまま伝わりますから有難い。政治家にとっては自分の考えをより広く発信するための良い手段だと考えている。~岡田大臣は時おり笑みを浮かべながら楽しそうに答えた。

『ニコニコ動画』は質問内容を決めるために、三者択一のアンケートを行った。1)「政治家と官僚の関係」、2)「ネットとテレビの関係」、3)「生活サイクルと健康維持」の3つからひとつを選んでもらった。回答は、1)が41.8%、2)が48.7%、3)が9.5%となり、「ネットとテレビの関係」を岡田大臣にぶつけることになった。

政府は国民のために行政を行っており、省の最高責任者である大臣は国民に向かって話しかける義務がある。大メディアの記者の浮世離れした質問は、国民のためになっているのだろうか。少なからず疑問である。

視聴者からの質問を大臣に問う『ニコニコ動画』の取組み。これまで大臣と国民との対話はタウンミーティングなど「特定少数」に限られていた。だが、インターネットは「不特定多数」の国民と大臣が会話できる可能性を秘めている。

(引用終了)

この記事を読んで思ったことは、いよいよネットメディアが記者会見に参入したことで、既存のメディア自体がネットを通じて国民から見られる存在となったということと(外務省はすでに大臣・副大臣の記者会見の録画をネットで配信しているが)、さらに、ネット・メディアである「ニコニコ動画」がそれを生中継することにより、ネットを通じてとはいえ記者会見の場で直接国民が大臣に質問をぶつけたという事実の重要性である。

これまで、記者会見がクローズされていたため、記者会見が政権側とメディアとの間に馴れ合いがあったとしても、それが国民の目に触れることはなかった。従って質疑の質も誰からもチェックされることはなかった。いわれているような「情報の垂れ流し」ということも検証できなかった。しかし、それが国民の目にさらされることになったことは重要だ。既存のメディアの姿勢そのものが問われる事態が出現したということである。

さらに、記者会見がネットで生中継されたことによって、ネットの双方向性を生かして国民のからの質問をぶつけるという試みを実行されたことである。直接国民が大臣に質問をしたということの意味は、既存のメディアと国民が対等な位置に立ったということでもある。さらに端的に言えば国民が既存メディアの競争相手となったのである。これは画期的である。

これが成熟していくと既存メディアの報道に質的な変化をもたらす可能性がある。ネット・メディアは速報性において既存のメディアを超えることは明白であるが、それ以上に既存のメディアが伝える情報の質が問われることが重要である。まずその質問の質が問われる。単なる情報の横流しならばその存在意義すら問われかねない。

その上で、既存のメディアには、プロとしての的確な情報の分析や論評が国民から求めらることになるであろう。調査報道への期待が高まることも予想される。また、そこにメディア同士の、あるいは記者同士のある種の競争状態が自ずと生じるかもしれない。「記者クラブ」的横並びは許されない。さらに、すでに生じていることではあるが、既存メディアはネット・メディアを無視できなくなる。ネット・メディアとの本格的な競争も覚悟しなければならない。いずれにしても、既存メディアが自らの「存在理由」を問う事態を避けることができなくなる。

以上のような事態がメディアの中に生じることは、国民にとってはより質の高いかつ多様な情報を取得できる可能性を意味するであろう。これは少なくとも日本の民主主義にとって誠に慶賀すべきことではなかろうか。

2009-10-27

星野道夫の世界~ALASKA ☆ 星のような物語

星野道夫との出会いについては、またの機会に書いてみたいと思っているが、とりあえず「星野道夫の世界」を紹介する動画を見つけたのでご覧いただきたい。



荒木経惟が「死」を感じさせるとすれば、星野道夫は反対に「生命」を感じさせてくれる。荒木があくまで「人間」と人間が造り出した「都市=東京」を見つめたとすれば、星野は「人間」を超えた「自然」あるいは「宇宙」を見つめたと思う。

アラスカ 風のような物語(小学館)
旅をする木(文藝春秋)
長い旅の途上(文藝春秋)
ノーザンライツ(新潮社)
イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する(新潮社)

2009-10-26

荒木経惟という現象

もの思う秋。写真家、荒木経惟の「東京人生since1962」(basilico,2006)を再読した。荒木さんは、一貫して東京に寄り添うように、東京という「もの」と「こと」を写真に写し取ってきた。だから、題して「東京人生」という。



妻陽子さんとの「センチメンタルな旅」の始まりと終わり。人生は短く、哀しい。写真に荒木さんのコメントがついている。(以下、写真のコメントは荒木さん)



「1971年7月7日、陽子と結婚。「センチメンタルな旅」がこの日から始まった。」



「この写真好きだね、この陽子好きだね。はじめて撮った時「物思いに耽る表情が良い」と言ったらしい。」



「陽子とチロと私。幸福の構図。陽子は東京女子医大に入院することになった。」




「手指をにぎりしめると、にぎりかえしてきた。お互いにいつまでもはなさなかった。午前三時十五分、奇跡が起こった。陽子が目をパッとあけた。輝いた。私はベッドにあがって、何枚も撮った。1990年1月27日、妻陽子死去。享年44(満42歳)。」



「棺の中に楽しみにしていた「愛しのチロ」を入れて陽子を送った。」



「雪の日にチロがバルコニーに出て、はねた。「センチメンタルな旅・冬の旅」のラストシーン。」



「妻が逝って、私は空ばかり撮っていた。」



「陽子がいなくなって錆びたテーブル。バルコニーでチロとふたり。」(荒木さんのコメントはここまで)

日本の写真史における「巨匠」、荒木経惟。彼の写真には、例えば都市の情景であっても、あるいは緊縛された女を撮っても、いつも「滅び」や「死」の匂いが漂う。また、彼の写真は、被写体を通して彼の人生が重なって見える。だから題して「センチメンタルな旅」という。初期の写真から現在までそれは見事に一貫している。これは驚くべきことだと改めて感じる。

折りしも、NHK-BShiのプレミアム8「写狂人の旅~アラーキーと歩く4日間~」を観た。アラーキーも、もう69歳か。私が荒木さんに初めて出あったのが「わが愛、陽子」(朝日ソノラマ,1978)という写真集。



1978年発行、彼が38歳、私が25歳のとき。不思議な縁を感じる。それ以来30年の付き合い。これも凄い「こと」だ。私の人生の半分以上だ。「愛する人の死、父や母の死、陽子の死、これが自分を飛躍させる契機になってきた、進む道をはっきりさせてきた」と番組の中で語っていた。

陽子さんの死後、引きこもっていたアラーキー。「チロちゃんがね、朝バルコニーで跳ねるんだよ。勃起しろって、ね」(上記、雪のバルコニーの写真に対する番組でのコメント)。



陽子さんが生前、「センチメンタルな旅」の中で唯一好きだを言っていたという一枚。合掌。

アフガニスタンのベトナム化

アフガニスタンの政情が不安定化している。途方もない不正選挙がカルザイ大統領の正当性を低下させている。米国軍やNATO軍に対するアフガン国民の怒りが頂点に達っしている。かってロシア軍が敗退した同じ道を米欧軍も辿っているように見える。お隣のパキスタンでも反米感情が高まっている。オバマ大統領は重大な決断のときを迎えている。たとえ軍隊を増派したとしても一時しのぎにすぎない。増派はその次のより大きな失敗を用意するだけであろう。泥沼化は不可避の情勢だ。否、既に泥沼化してるとみるべきであろう。アフガン問題がオバマ政権の命取りになりかねない。このような情勢の中で日本が軍事的な支援をするのはまったく合理的でない。徹底して民生支援で行くべきだ。しかもカルザイ政権への支援に偏重してはならない。NGOなどと連携したアフガン民衆への直接支援を優先すべきであろう。

アフガン戦争で苦境に陥るオバマ政権(その1) ── 増派か戦略修正か撤退か
アフガン戦争で苦境に陥るオバマ政権(その2) ── 増派か戦略修正か撤退か
「THE LOURNAL高野論説」より

.〔アフガン〕国会議事堂前で約千人の学生が欧米軍に抗議 「低気温のエクスタシーbyはなゆー 」より
アフガニスタンの首都カブールの国会議事堂前で、およそ1,000名の大学生が、NATO軍と米軍に抗議し「アメリカに死を!」のスローガンを掲げてデモ行進。さらにアメリカ国旗とオバマ大統領の人形が焼かれた。
☆Afghans burn Obama effigy to protest Quran burning (イラン・プレステレビ)
http://www.presstv.ir/detail.aspx?id=109564&sectionid=351020403
The angry people also set on fire an effigy of US President Barack Obama and a US flag. "Death to America" was heard during Sunday morning's demonstration.


2009-10-24

米国のポチか、それとも・・・

日本語で「国際貢献」とは、特に日本国の外務省筋では「米国追従」という意味であるらしい。しかし、明治維新以来の民意による革命的政権交代をはたした民主党政権は、「対等は日米関係」と「東アジア共同体」を模索することを標榜している。その真の意味は何かということがこれから試されていくことになるだろう。政権発足早々、鳩山論文に対する米国の反日的論調があり、今回の一連の米国政府との交渉で見えてきたのは、米国の相変わらずの「脅し」外交とそれにずるずる屈するかに見える民主党政権の姿である。「米国のポチ」という自公合体政権と同じ道を行くことになるのだろうか。

【普天間基地移設問題 米軍基地撤去の立場で粘り強い交渉を。 「大脇道場」より
やはり、アメリカには頭が上がらないのか。
しっかりしてくれと言いたい。「見直しの方向で臨む」とは、選挙向けの口先だけの話だったのか?!
「対等な日米関係」など日米軍事同盟の元ではありえないことが証明されようとしている、と言われても仕方がない。
橋本・モンデール合意以来13年間、沖縄県民は普天間基地移設をくいとめてきた。
合意はすでに破綻しているのだ。
ゴロツキのようなゲーツの脅しに押し切られ、公約も投げ捨てて、ギブアップか。
「アメリカ主導」に対し、沖縄県民の立場でモノが言えない民主党の限界が見えてきたのではないか。
最初が肝心なのに・・・。
ここで押し切られれば、もう米軍基地問題については、ずるずるとアメリカの言いなりになった自公政権とは変わりないだろう。
従来路線を変えることは、大変な時間と労力が要るだろうが、その先頭にたってほしい。
新政権への期待を裏切ることなく、普天間基地移設問題は、米軍基地撤去の立場で粘り強い交渉を進めることを強く望むものである。

鳩山首相の東アジア共同体構想は100%失敗するだろう 「米国からの便り」より
米国を東アジア共同体に加えるといった時点で、鳩山首相の東アジア共同体構想に賛成する国はアジアには1カ国も賛成する国は出ないだろう。東アジア共同体に米国を加えないと言えば、アジア諸国はもちろん米国を除いたすべての国からも日本の外交能力は向上したとほめられた可能性が高いのに、普天間基地問題も日本国内ではなく米国へ移転させる案を出し、それを米国が拒否したら日米安保そのものを破棄して米軍兵士は一人残らず日本国内から追放するようにするべきである。そんな当たり前の外交が出来ないところはさすが元自民党議員。外交オンチは自民党となんら変わらない。

【ゲーツ襲来】SM-3ブロック?Aの共同開発条件を変更するなら普天間移設も再検討しろ!【傲岸不遜】「ステイメンの雑記帖」より
アメリカのオバマ政権は、去る9月に裏切り者ブッシュ政権が推し進めていた中欧のポーランド、チェコでのミサイル防衛(MD)計画を見直しを行った。 これは、ひとえにアメリカが対露助関係の悪化を防ぐための意味合いが強いわけだが、これに代わるものとして海上配備型のRIM-161 SM-3などを展開させる模様である。さて、RIM-161 SM-3は、最新のブロックⅡシリーズが日米共同で開発中である。
これは、弾道弾迎撃ミサイルを共同開発、生産する場合に限って武器輸出三原則の例外措置としたものであり、04年12月から対米供与に限定して認めたものである。
ところが、沖縄の海兵隊普天間基地の移設問題で日本政府を恫喝していていったゲーツ国防長官が、SM-3ブロックⅡシリーズを欧州向けに供与出来るように武器輸出三原則を緩和するよう要求していたようだ!
あれだけ「代替施設(建設)なしでは(在沖縄海兵隊の)グアム移転もない。沖縄での兵員の縮小と土地の返還もない」などと言っておきながら、その一方で「武器輸出三原則を緩和」などとは傲岸不遜にも程がある!
無論、対欧関係など日本を取り巻く国際関係を考えた場合、SM-3ブロックⅡシリーズの供与拡大は検討課題ではある。
だが、今回のゲーツの言い様はまさに問答無用であり奴が日本など属国として見ていない証左である!
今回、ゲーツの傲慢極まる要求に唯々諾々と従ってしまう事は、武器輸出三原則の骨抜きになりかねず、普天間移設問題と合わせて民主党がマニフェストに掲げた「対等な日米関係の構築」が画餅に期しかねない危険性がある。
またSM-3ブロックⅡシリーズは日米両政府の合意の元で共同開発を行っているものである。その条件をアメリカ側の一方的な都合で変更しようというのなら、同様に普天間の移設先についても再検討を加える事が可能なはずである!
少なくとも、辞を低くして協議を求めてきたのならともかく、今回ゲーツ訪日によってアメリカが突き付けてきた一方的かつ傲慢な要求など蹴飛ばすべきである。
例えそれがアメリカ相手であっても、言うべき事を言って断固として意志を示す事こそ対等な二国間関係の始まりとなろう!

シバレイのblog」より
あのブッシュ前米大統領が来月3日に来日するようですね。しかも、日本シリーズの始球式に参加するとか。どの面下げて来るつもりなんでしょーか。千葉景子法務大臣に是非お願いしたいのは、ジュネーブ条約締約国に義務付けられた、戦争犯罪人の訴追作業を速やかに行うことです。ジュネーブ第1条約第49条、ジュネーブ第2条約第50条、ジュネーブ第3条約第129条、ジュネーブ第4条約第146条では、重大な人道法違反があった場合、いかなる国であっても、捜査を開始し、また被疑者の犯罪責任に関する十分な証拠があれば、その被疑者が締約国の管轄権が及ぶ領域内に足を踏みいれたといった条件を満たさなくても、容疑者の引き渡しを要求する権限を認めています。今回、重大な戦争犯罪の容疑者が領内に足を踏み入れるのですから、まずは身柄を拘束し、起訴するべきでしょう。

フィルム・ノワールFilm Noir

このところ古い映を続けて観た。WOWOWが特集で「フィルム・ノワールFilm Noir」(仏語で、暗黒映画)と呼ばれる一連の映画を放送した。1940年代前半から1950年代後期にかけて、主にアメリカで製作された犯罪映画で、影やコントラストを多用した色調やセットで撮影され、行き場のない閉塞感が作品全体を覆っている。夜間のロケーション撮影が多いのも特徴とされる。

「多くのフィルム・ノワールには、男を堕落させる「ファム・ファタールFemme fatale(運命の女、危険な女)」が登場する。また、登場人物の主な種別として、私立探偵、警官、判事、富裕層の市民、弁護士、ギャング、無法者などがあげられる。フィルム・ノワール以前の映画と大きく異なる点は、これらの登場人物が、職業、もしくは人格面で堕落しており、一筋縄ではいかないキャラクターとして描かれている点である。彼らは、シニカルな人生観や、閉塞感、悲観的な世界観に支配されている。登場人物相互間での裏切りや、無慈悲な仕打ち、支配欲などが描かれ、それに伴う殺人、主人公の破滅が、しばしば映画のストーリーの核となる。ストーリーの展開としては、完全に直線的な時系列で物語が語られることはまれであり、モノローグや回想などを使用して、物語が進行することが多い。」(Wikipediaより)



今回観たのは、古い順に、「飾窓の女The Woman in the Window」(1944)監督:フリッツ・ラング、「上海から来た女The Lady from Shanghai」(1948)監督兼主演:オーソン・ウェルズ、「ショックプルーフShockproof」(1949年)監督:ダグラス・サーク、「秘密調査員Undercover Man」(1949年)監督:ジョゼフ・H・ルイス、「大いなる夜The Big Night」(1951年)監督:ジョゼフ・ロージー、「キッスで殺せKiss Me Deadly」(1955年)監督:ロバート・オルドリッチ、「夕暮れのときNightfall」(1957年)監督:ジャック・ターナー。
(これとは別に、wowowでは近未来映画の金字塔「ブレードランナーBlade Runner」(1982年)監督:リドリー・スコットも先ごろ放送した。これもフィルム・ノワールの風合いがあり断然お勧めの映画である。)

白黒映画の肌触りがしっとりとこころを覆ってくれる至福の時間を味わうことが出来る。特徴としては、「一筋縄ではいかないキャラクター」というのはそのとおりで、二項対立的はものの見方はとらない。正義の味方と思いきや、社会の規範を飛び越えて欲望の虜になっていく、とか、悪逆非道な犯罪者かと思いきや、妹思いの兄だったり、とか、興味深い人間観が垣間見える。人間の本質というものが否応なく表出される「戦争」というものが時代背景にあることも考えれられる。お馬鹿のブッシュ・コイズミ式の単純な敵味方論的「勧善懲悪」ものでない「大人」の味わいが、私の好みに合うんだなぁ。



フィルム・ノワールの光と影エスクァイアマガジンジャパン


2009-10-23

百鬼夜行の世界


今、小松和彦著「百鬼夜行絵巻の謎」を読んでいる。こんなにたくさんの「百鬼夜行(やぎょう)絵巻」が存在するとは知らなかった。六十数巻。その系統を探る謎解きのドラマが展開する趣向。妖怪好きにはたまらないのは、「ヴィジュアル版」というだけあってすべてカラー図版で主要な「絵巻」が掲載されていることである。さらにその比較から分類まで。

昔、宮田登著「妖怪の民俗学」を読んで感動したことを思いだした。何に感動したかは忘れてしまったが、強い印象が今でも残ってる。当然水木しげるの世界には目がない。

迂闊だったが、国際日本文化研究センターでは、膨大な絵巻などの史料がデータベース化されている。ウェブで検索できるのはありがたい。謎解きのキーになった日文研所蔵の「百鬼ノ図」も鮮明な画像で見ることが出来る。これからの楽しみが増えた気がする。

ともあれ、日本人は昔っから妖怪好きであったことがよく分かる。室町時代の「百鬼夜行絵巻」から宮崎駿のアニメ「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」まで。加藤周一と高畑勲の対談が思い出される。「もののけ姫」では中世から近世へ移行する時代の日本人や日本社会の変化の重大な意味が描かれていた。乱暴に言ってしまうと、人知を超えた「百鬼夜行」の世界から理解と利用可能な「自然科学」の世界へ。自然に対する日本人の世界観の大転換の時代。信長の自然を恐れぬ破壊的なまでの合理的精神を見よ。

しかし、すべてが変ったわけでもない。われわれのこころの中には「百鬼夜行」の名残がちゃんとある。文化の持続性と重層性いうこと。そういえば先頃「座敷童」で有名な遠野の旅館が焼けてしまった。残念なことである。

百鬼夜行絵巻の謎集英社新書ヴィジュアル版

2009-10-22

生きている問い

「イル・サンジェルマンの散歩道」より引用 2009. 10. 21


ギィ・モケの別れの手紙La lettre d'adieu de Guy Môquet

68年前の10月22日、ひとりの17歳の青年がレジスタンスに殉じ、その短い生涯を終えました。

鉄道員であり共産党の代議士であった父親が、1939年にアルジェリアの強制収容所に送られたとき、当時16歳であったギィ・モケは、共産党の青年組織に加わりました。1年後パリで非合法のビラを撒いていたときに逮捕され、ロワール・アキテーヌ県にあるシャトーブリアンの収容所に送られました。

1941年10月22日ギィ・モケは、ドイツ軍将校の殺害の報復として、収容所に入れられていた他の26人とともに銃殺されました。死を前にして、一通の手紙を両親に送りました。今日彼の名前は、パリの地下鉄の駅そして数多くの街路に見られます。

僕の大切なお母さん、
僕の大好きな、可愛い弟、
僕の愛するお父さん、

僕はこれから死ぬのです!僕があなたたちに、なかでもお母さん、あなたにお願いがあります。それは毅然としていてほしいということです。僕は毅然としています。そして僕の前に殺された人たちと同じくらい毅然としていたいのです。もちろん、僕は生きたかった。でも僕が心から願うことは、僕の死が何かに役立ってほしいということです。僕にはジャンに接吻する時間がありません。僕のふたりの弟、ロジェとリノには接吻しました。本当のことを言えば、それができないのです。ああ!僕の身の回りのものすべてが、お母さんに送られることを望みます。それはセルジュに役立つでしょうから。僕はセルジュが、ある日それを持つことを誇りに思うことを願っています。お父さん、あなたに。もし僕がお母さんを悲しませたと同じくらいお父さんを悲しませたとしたら、僕は最後にもう一度あなたに別れの挨拶をします。あなたが僕に指し示した道を、僕は最善を尽くして歩いてきたということをわかってください。
最後の別れを、僕のすべての友達に、僕が大好きな弟に。(立派な)男になるように、しっかり勉強をするように。17年と半年、僕の人生は短かった。 僕は叔父さん、ミッシェルと一緒に死んでいく。お母さん、僕があなたに望むのは、僕があなたに約束して欲しいのは、気をしっかりと持つこと、そして悲しみをのりこえることです。

もうこれ以上書けません。僕はあなたたちみんなから、おかあさん、あなたから、セルジュから、お父さんから、僕の子どもの心にあるすべてを込めてあなたたちに接吻をしながら、僕は去って行きます。勇気を出して!

あなたたちの愛した、あなたたちのギィより。
ギィ

最後に。あなたたちすべてが、わたしたちに、これから死んで行く27人にふさわしい存在であり続けてください!

(引用終了)

加藤周一は戦後すぐに「新しき星菫派に就いて」を書き、数年後に「抵抗の詩人たち」を書いた。戦時中に大日本帝国では「抵抗運動」はほとんどなく、フランス共和国では執拗な「抵抗運動」が行なわれた。この彼我の差は何か?現在もその問いは生きつづけている。

2009-10-21

内弁慶の典型例

国内では通用するかもしれないが、国際的にはまったく通用しないことがニホンコクには多すぎる、という気がする。その典型的な人物がこの人。その例としてThe Seoul Timesの記事を以下に引用しておく。


Letters from Tokyo
Japan under Ishihara Must Not Be Given the 2016 Olympics
By Lee Jay Walker
Tokyo Correspondent

(Shintaro Ishihara (石原 慎太郎), who was on Sept. 30, 1932, is a Japanese author, politician and the governor of Tokyo since 1999.)

The Olympic Committee must be given all the facts about the Governor of Tokyo because Shintaro Ishihara is not only a denier of history; he is a dangerous maverick who installs anti-Korean and anti-Chinese hatred. Not only this, we are talking about a rampant sexist who made an alarming comment about the role of women in society. Ishihara also belittled Africans in another tirade and the only reason he remains so silent recently, is because the nationalist leader of Tokyo understands that he is under the international spotlight. Therefore, it is essential to enlighten people about this individual who stokes up hatred towards others via un-logical outbursts of inhumanity.

We must all remember that the spirit of the Olympics is about unity and all nations unifying under the banner of sport. In the past the Olympics was sometimes hijacked by both ideological sides during the Cold War. However, in recent times the Olympics is back on track but if Ishihara emerges victorious then the games will become tarnished.

I stated in an earlier article that "Ishihara desires to leave a legacy but the real legacy of Ishihara is being anti-Korean, anti-Chinese, and anti-foreign in general. I am not talking about mild nationalism but an extreme version of anti-Korean and anti-Chinese nationalism which is based on dangerous grounds. This applies to historical revisionism and when this applies to an important political figure like Ishihara, it is clearly dangerous. Therefore external forces must notify others about the consequences of awarding Tokyo the Olympics under such a blatant revisionist of history."

Given the reality of the Governor of Tokyo, then surely this issue must be raised because it is in complete contradiction to the Olympic ideal. I also wonder why the Olympic Committee is even entertaining the current Tokyo 2016 bid under such a blatant nationalist.

Therefore, my conclusion is that the Olympic Committee does not understand the true nature of Ishihara and the same applies to the other bidders of the 2016 Olympic Games. Also, it would appear that people who are in the know are not raising their voices loud enough. Yet just imagine if Tokyo was awarded the 2016 Olympics. It would mean a victory and a legacy for a nationalist leader who denies the real impact of the Rape of Nanking and he supports other forms of revisionism.

In 1990, Ishihara clearly denies one of the worst massacres of the 20th century, and we are talking about a century which had numerous terrible massacres. Ishihara made it known in a Playboy interview that the Rape of Nanking was merely fiction because he claimed that "People say that the Japanese made a holocaust but that is not true. It is a story made up by the Chinese. It has tarnished the image of Japan, but it is a lie." Also, more recently he backed the film The Truth about Nanjing, which also claims that the Nanking Massacre was Chinese propaganda and based on false history.

So would the Olympic Committee award Germany if the local governor denied the Jewish and Gypsy holocaust during the NAZI period? Of course not, indeed the individual would face criminal charges for inciting hatred. Yet sadly, and to my amazement, both the Olympic Committee and the people of Tokyo are not speaking out enough against such an important political leader.

Of course I am not saying that Tokyo should not be awarded a future Olympic Games, certainly not; however, Tokyo should be prevented from holding the 2016 Olympic Games under the current political leader. If Tokyo emerges victorious then clearly it will become "a very dark day" in the chapter of the Olympic Games.

Other obnoxious comments by Ishihara include an extremely sexist statement and just think about what he said. For in 2001 Ishihara stated in the Shukan Josei magazine that he subscribed to the theory that "old women who live after they have lost their reproductive function are useless and are committing a sin." He is therefore implying that women are no longer fit to be alive and that they are useless once their reproductive function is over.

It is surely hard to surpass such a terrible and cold-hearted comment but of course Ishihara did not apologize. So I wonder what he thinks about female sport stars?

Turning back to the often used "racial card" by Ishihara, then he clearly understood what he was implying when he stated "Atrocious crimes have been committed again and again by sangokujin and other foreigners. We can expect them to riot in the event of a disastrous earthquake."

For people who do not understand the real meaning of this statement, then let me enlighten you a little. During the 1923 Great Kanto earthquake many massacres took place whereby Koreans were killed like lambs to the slaughter. These brutal killings took place because some Japanese newspapers made terrible false rumors. Therefore, thousands of Koreans were butchered and other ethnic groups, notably Okinawans, also suffered at the hands of nationalists.

For Ishihara, he fully understood what he was implying and this sums up the character of this person. So what would happen today if an American leader stated that slavery was ok? Yes, he or she would rightly suffer the consequences but for Ishihara he wants to keep nationalism alive and in its worse form.

So if you are alarmed by the rants of Ishihara and the menace he poses to foreign nationals and the stereotyping of women, it is vital that you contact your respective member of the Olympic Committee and your local politician. Ishihara may win if people remain silent but if Tokyo does win the 2016 Olympic bid then it will be a sad day for equality and the international global village. Therefore, it is up to individuals and organizations to campaign against Ishihara.

LEE JAY WALKER
leejayteach@hotmail.com
THE SEOUL TIMES

2009-10-20

小沢幹事長の記者会見

民主党のホームページでは、記者会見のビデオをネット配信している。一昨日(2009年10月19日)の小沢幹事長定例記者会見を見た。面白い。基本的に、記者と小沢幹事長の真剣勝負の場になっている。くだらん質問をすると「もっと勉強してきてくれ」と突っ込まれる。なかでもこの場面は印象的だった。テレ朝の若い記者が、「今幹事長が進めている国会改革が実現すると国会や政治家のあり方が激変すると思いますが、それがすべて実現した場合、その先の日本の姿というのは今と較べてどのように変っていくとお考えですか?」という質問に対して、ずばりっ!「私どもも諸君も含めて、私の一言でいえば、『自立した個人と自立した個人の集合体である自立した日本』ということです。」(爺註:福沢諭吉の『一身独立して一国独立する』とまったく同じ!)すばらしい。こんなことを大真面目に言える政治家は小沢幹事長しかいない!教育者でもあるな、このお方は。これを伝えるマスゴミは皆無。情けない。

産経新聞記事の笑止千万!

ネトウヨ同人誌と揶揄されている「サンパイ新聞」が、各閣僚への評価が落ちている、特に亀井大臣に対する評価はガタ落ちだとか宣伝している。そもそもこんな調査にどれほどの意味があるのか。小学生の自由研究程度のしろもの。この新聞の程度が知れる。ここまで落ちればアッパレ。後は「倒産」あるのみだわ。

(引用開始)
【産経FNN合同世論調査】亀井氏は評価急落 他の閣僚も微妙に下落
2009.10.19 22:40

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、鳩山内閣を支える閣僚や民主党幹部への評価が微妙に下がっている。特に、就任直後に中小企業や住宅ローンを対象にした返済猶予法案を打ち出した亀井静香郵政改革・金融相は、前回調査より15ポイント以上も評判を落とした。
調査では、亀井氏のほか、岡田克也外相、長妻昭厚生労働相、前原誠司国土交通相、福島瑞穂消費者・少子化担当相と小沢一郎民主党幹事長の6人が「適任かどうか」を尋ねた。
その結果、岡田氏と、前回調査項目になかった前原氏を除く4人がそろって内閣発足直後の前回調査と比べてポイントを下げた。
前回調査で70・0%と5人の中で最も高かった長妻氏は今回、3・7ポイント下げて66・3%。子ども手当の財源確保に苦労し、後期高齢者医療制度廃止の先送りを強いられるなど、四苦八苦する姿が連日報道され、国民の高評価に変化が生じつつあるようだ。
最も評価を下げた亀井氏は3割を切って24・9%。発足直後は41・8%だった評価は16・9ポイントも低下した。亀井氏が打ち出した返済猶予制度の導入には54・9%が賛成しているが、政策の是非と閣僚としての評価は別だという結果になった。福島氏も発足直後に6割を超えた評価が46・8%と約15ポイント減った。小沢氏も評価を49・0%に下げた。
5人のうち唯一、評価を上げたのが岡田氏だ。内閣発足直後に63・7%だった評価が、今回、70・1%と6・4ポイントもアップした。民主党支持層でみると、評価する声は84・0%に達した。就任後の約1カ月の半分を外遊に充て、米国やアフガニスタンなど6カ国を訪問。核の持ち込みや沖縄返還をめぐる日米間の密約についての調査を開始するなどの行動が評価されたのかもしれない。(小島優)

(引用終了)

口直しに、飯山一郎先生のブログを引用しておく。

(引用開始)

◆2009/10/18(日) いま,壮絶な死を覚悟した男が…
「この亀井静香をCIAが暗殺でもしない限りは、アメリカの言うとおりにはならない!」
これは亀井静香の言である.
発言の日時・場所は,平成21年10月9日(金),於・金融庁大臣室.
「アメリカの言うとおりにはならない!」
と,亀井静香は金融庁の大臣室で断言した.
これは独立宣言という重大な意味をもつ.
この瞬間,アメリカの属国だった日本は,「独立」を宣言したのである.

しかも,亀井静香は暗殺される事態をも想定して宣言している.
壮絶な死を覚悟しての,身命を賭しての独立宣言なのだ.
この命懸けの発言は,金融庁のHPに載っている.
金融庁という一国の省庁が,「CIAが暗殺」という大臣の決死の覚悟の言葉を載せる.
これは由々しき事態である.尋常なことではない.まさしく独立宣言なのだ.

「アメリカの言うとおりにはならない!」
これは「日本は米国の不沈空母」などという,ふやけきった植民地根性とは違う…,
日米という因縁の国家関係の狭間(はざま)に仕掛けられた,怨念の時限爆弾だ.
亀井が身命を賭して放った言葉の時限爆弾.これが破裂するのは,いつなのか?
この独立宣言の重い意味は,今後,日米双方が思い知ることになる….

独立宣言の後,亀井静香は,さらに大胆不敵になっている.
命を棄てた男に,もはや恐いものはない.これ以上,失うべき何物もない.
こうして,亀井は退路をすべて断ち,いとも簡単に聖域に踏み込んで,言った.
「特別会計に切り込めば20兆や30兆位すぐ出てくる!」
と,従来なら暗殺必至の暗黒街に突入してしまったのである.また…,
「今の特別会計は役人が抱え込んで,彼らの小遣いになっている」
と,それを言っちゃお仕舞い(失脚)の言葉も放ってしまった.

亀井静香.そして小沢一郎.
ふたりの“巨魁”が,いま,身命を懸けての壮絶な闘いを開始した.

◆2009/10/19(月) 男子,三日会わずんば…
昔.呉の国の呂蒙(りょ もう)という武将がいた.
その勇猛果敢な戦いぶりは三国一!と言われ,魏や蜀の国にも名前が響いていた.
が,無学文盲だったため,心配した主君の孫権は呂蒙に教養の大切さを説いた.
主君の期待に応えるべく,呂蒙は寝る間も惜しみ,一心不乱に勉学に励んだ.
ある日,幼馴染の魯粛が色々質問すると,どんな難問にもスラスラと答える….
呂蒙は学者も顔負けの学問を身につけ,三国一! の智将に育っていたのである.
魯粛が「今の呂蒙は昔の荒くれ武将の呂蒙と全然違う!」 とビックリすると,呂蒙は,
『男子三日会わずんば即ち刮目して見よ!』 と答えたという.
この意味は…,
「志の高い有能な男子は自己鍛錬によって,3日ほどで別人のように成長する!」
ということだ.
人間,ハラをくくって鍛錬すれば,“神“にも,“仏(ほとけ)”にも,“鬼”にもなれる.
たとえば…,
亀井静香がそうだ.亀井は,3日見ぬ間に,3日前の3倍の権力を手中にしている.
ともかく,いま…,
亀井静香を刮目して見つづけよ! 亀井静香は,間違いなく “鬼神” になる!(後略)

(引用終了)

文は人なり。

2009-10-17

日本の常識は世界の非常識

日本の常識が世界の非常識、これを一つ一つ取り除いてほしいもの。

(引用開始)


 岡田克也外相は16日の記者会見で、国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟について「前向きに検討したい」と述べた。
ハーグ条約は、離婚した夫婦の一方が無断で自国に連れ帰った子供を元の国に戻す手続きを規定。1980年に採択され、80カ国以上が加盟している。日本は先進7カ国のうち唯一未加盟で、国際離婚の増加を受けて各国から加盟を求められている。
岡田氏は「(海外から)日本人女性が子供を連れ帰ってくるのが問題になっているが(逆に)子供が日本からいなくなり、アクセスもできなくなるケースが増える可能性がある」と指摘した。
一方、米英など8カ国の駐日大使らがこの日、千葉景子法相に面会し条約への加盟を要望。
大使らは「日本へ、あるいは日本から、子供を連れ去られた親には、連れ戻す望みがほとんどない。子供は両親と面会して成長すべきで、新政権の協力を切望する」との共同声明を発表した。2009/10/16 20:08 【共同通信】

(引用終了)

今まで日本政府は口では「先進国」の仲間のふりをしながら、実は「発展途上国」並みの行動を続けてきたのが実態だろう。そのことを国民にできるだけ知らせないようにしてきた。特に「人権」や「環境」での「特殊性」が目立つ。この問題もそのひとつだろう。政権交代を機に残された問題を「先進国」並にしてほしい。例えば、死刑の廃止、取調過程の完全可視化、「代用監獄」の廃止、少人数学級の実現、高等教育の無償化、医療費の無償化、失業給付・職業訓練の充実など。


2009-10-15

画期的な東京新聞の社説「新聞週間/国民のため検証が任務」

今日(2009年10月15日)の東京新聞朝刊の「社説」を見て驚いた。


「新聞週間」と題する文章だが、「メディアとの関係で前政権との大きな違いは、各省事務次官の記者会見禁止とこれとは裏腹の首相会見や大臣会見の「完全オープン化」の原則だ。首相就任会見では完全開放の約束は守られなかったものの、岡田克也外相主催の外務省会見はフリーランスやネットメディアまで会見はすべてのメディアに開放され、完全自由化は今後、各省庁の大臣会見に広がっていく可能性がある。」とまで書いている。


「記者会見の完全開放」という問題を「社説」で取り上げること自体が「画期的」なことだ。それも「記者会見の完全開放」を「肯定」できることだとし、「むしろ多数の専門記者の参加こそ、質疑応答の多様化と充実をはかり、国民の注視に堪えられる会見にさせるとさえいえる。」とまで書き、さらに「新聞は国民のために存在する。・・・新聞の重大任務は記者クラブに安住することでなく、国民のための政策が遂行されているかの分析と検証にあるのは明らかだ。その任務が遂行できてこそ国民の新聞への信頼が生れると自覚したい。」と結論づけている。


いやぁ、東京新聞は偉い!新聞の原点にさかのぼって上記の主張を掲げたことに「一国民」として敬意を表する。堂々と新聞の「王道」をまい進してほしい。


2009-10-14

月曜日に乾杯!

フランス映画「月曜日に乾杯!」を観た。

しがない中年のおっさんが家族にも言わず、工場を無断で休んで、旅に出る話。ヴェネツィアの町並みが素晴らしい。かみさんは夫から来る絵葉書は全部見る前に断固として破る。その間、村の生活はいつもどおり、淡々と家族の生活も続く。ある日ふらっと帰宅するおっさん。コーヒーを入れるかみさん。「屋根に雨漏りがするから直してよ」「そうかい、雨漏りが・・・」でまた元の日常生活にもどる。同居のばあさんが「長かったね」「いや、あっという間だったよ」。ちょっと日常性から逸脱してみたかったおっさんの気もちが涙が出るほど分かる。しみじみとしたいい映画だったなぁ。

おまけ。屋根の上からのヴェネツィアの眺め。サン・マルコの塔や、
はるかジュデッカ運河を望み、対岸のサン・ジョルジョ教会や大運河 Canale Grande と交わるところ、サルーテ教会のたたずまい。美しーーーい!ヴェネツィア地図を広げて、んっ!ここからの眺めだと悦に入っている。

「これが聖なる息吹だ。この町にあふれている。この精霊がマルコ・ポーロに旅をさせ、ティツィアーノにあの絵を描かせたんだ。観光客では感じられないものだ。君へのプレゼントだよ」

読書計画!

怠惰への讃歌 (平凡社ライブラリー)

怠ける権利 (平凡社ライブラリー)



小沢幹事長の記者会見

民主党の小沢幹事長の初の記者会見のビデオを見た。民主党のホームページに掲載されている。

記者のお座なりの質問に「もっと勉強して質問してよ」と辛らつな応答をしていたのが印象に残った。記者会見を小沢幹事長は真剣勝負の場と心得ている。ところが既存メディアの記者は単なる記事ネタ探しの場と勘違いしているらしい。この落差がこんなやり取りとなって現れたのだろう。これが一回ではなかった。

中でネット・メディアの記者が「自民党の参議院議員の中には、自民党に絶望してうつろな眼をしている人がいる。民主党に移りたがっている。幹事長はこれらの議員を民主党に入れる考えはないか?」というような趣旨のすこしはっとするような質問をした。このとき、小沢幹事長は大笑いで応えて、次の瞬間には表情を引き締め直して、「うつろな眼をしている議員がいるかどうかは知らない。あくまで参院選は正攻法でいく。」と答えていた。

奇しくも、これは既存のメディアとそうでないメディアの違いが現れたものと感心した。

もう一つ、既存メディア以外の別の記者から、鳩山政権が記者会見をオープンにしていないことをどう思うか、との質問が飛び出し、「私は初めからオープンですよ。自民党時代から。政府のことは私の権限外。首相に聞いてくれ。」と返答していた。これは政府と党を完全に分離するという原則論からだろうが、記者会見に出て質問をできない記者からすれば、ちょっと木に鼻をくくったような答えで納得ができなかったのではないかと思った。

いずれにせよ小沢幹事長の記者会見は以前通りオープンであったこと、記者会見が真剣勝負の場になりそうな気配がすること、これがこの記者会見のことを書きたかった理由である。これからも注目していきたい。




今日の収穫

偶々、かもがわ出版という京都の出版社のホーム・ページを覗いていると、「居酒屋のムッシュ・素顔の加藤周一」(2009年8月)という朝日新聞の4回にわたる連載記事のコピーが目にとまった。

もともと、かもがわ出版は加藤さんの著書を30冊も出版していて、その中に「居酒屋の加藤周一」という著書がある。京都の立命館大学の客員教授をされていたときに居酒屋で一般の人と語り合った記録がこの著書の由来。その会を白沙会といった。それにちなんだ今回の記事だと思われる。これが加藤さんの知られざる一面が分かってなかなか面白い。

たとえば、「男はつらいよ」シリーズには、いい人しかでてこない、現実感がないと批判的だったこと。「国民的映画」という「国民的」ということに戦前の「国民的美徳」の強制をダブらせて警戒していたこと。女性へのプラニックな接し方にも現実感がないと映っていたのではということ。また、5年間山口県から通いつめたという「不登校」だった女性に対して、そのことにはまったく触れず、ひとりの大人の一個人として接してくれたことがありがたかったという思い出。「九条の会」の設立が、政治状況の悪化に危機感を覚えた加藤さんのアイデアから生れたこと、などなど。

今日の思わぬ収穫だった。