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2010-08-04

ブラザー軒 / 高田渡

高田渡に「ブラザー軒」という歌がある。鶴見さんの「小さな理想」で知ったが、詩は菅原克己という左翼詩人のものとか。彼は仙台市出身。仙台には、今も「ブラザー軒」というレストランがある。行ってみたくなった。仙台市青葉区。1902年(明治35年)11月3日、初代前田常吉がブラザー軒を開業、と案内にある。今は「一流」レストランのようだが、歌詞からは街の何でもない喫茶店といった趣が伝わる。この歌は仙台の七夕祭りの日の「幻影」だろうか?死んだ父親と妹。お気に入りの一曲だ。

「ブラザー軒」

東一番丁、ブラザー軒
硝子簾がキラキラ波うち、
あたりいちめん
氷を噛む音。

死んだおやじが入って来る。
死んだ妹をつれて
氷水喰べに、
ぼくのわきへ。

色あせたメリンスの着物。
おできいっぱいつけた妹。
ミルクセーキの音に、
びっくりしながら。

細い脛だして
細い脛だして
椅子にずり上がる
椅子にずり上がる

外は濃藍色のたなばたの夜。
肥ったおやじは小さい妹をながめ、
満足気に氷を噛み、
ひげを拭く。

妹は匙ですくう
白い氷のかけら。
ぼくも噛む
白い氷のかけら。

ふたりには声がない。
ふたりにはぼくが見えない。
おやじはひげを拭く。
妹は氷をこぼす。

簾はキラキラ、
風鈴の音、
あたりいちめん
氷を噛む音。

死者ふたり、つれだって帰る、
ぼくの前を。
小さい妹がさきに立ち、
おやじはゆったりと。

ふたりには声がない。
ふたりには声がない。
ふたりにはぼくが見えない。
ふたりにはぼくが見えない。

東一番丁、ブラザー軒。
たなばたの夜。
キラキラ波うつ
硝子簾の、向うの闇に。



2010-02-15

高田渡三昧

噛めば噛むほど味が出るのがこの人。高田渡という自由人。
その中でもまずはこの一曲がいい。「ブラザー軒」。そして「仕事さがし」、「生活の柄」・・・。

二人には声がない。
二人には僕が見えない・・・。







今時代が高田渡にフィットしている。しかし時代がかってに変わっただけで、彼自身は全く変わらない。頑固に一貫した人生を生きた。これだけでも稀有なことだろうと思う。合掌。


※「生活の柄」の歌詞の原詩は山之口獏の作。