2010-11-03

落語の楽しみ

権威に対する庶民の反骨精神としたたかさは落語によく登場する。逆に権威の象徴としての武士は笑いの対象であることをやめない。今、政官財学報の面々を笑い飛ばすことが庶民にできているか? 上方落語「試し切り」の一節。乞食を試し切りしたと自慢げに話す武士A、新しい刀を手に入れたという武士B、それを聞いてそれがしもとでかけると、

■よきことをお知らせ申そぉ●何でござる?■実は身共も先般、新刀を買い求めましてな。どこかで試し斬りをしたいものじゃと、常に腰に帯して歩いておりました夕べ。朋友に誘われまして道頓堀界隈で一盞(いっさん)を傾けて、ほろ酔い機嫌もござったがな、道を取り違えて南の方へ出てしもぉた。■堺筋へまいりましてな、日本橋、この南詰めに乞食が一人、薦(こも)を被って味寝(うまい)をいたしておりました。あたりに人無きを確かめ、これ究竟(くっきょ~)の試しものと心得てズッ、刀を抜き放ちましてな「こりゃ、寝耳ながらによく承れ。その方、生きて甲斐ある命ならば、かかる無益な殺生はいたさんが、生きて甲斐無きその方の境涯、亡きあとの回向は必ず手厚く弔ぉてとらす。身が試しものとなれ…、南無阿弥陀仏」■パッと斬り付けますと確かな手応え。あとを拭うのもそこそこに逃げて帰りましたが、誰も見なんだと思う。これならば、今宵にも試してごらんになってはいかがでござる?●なるほど…、野臥(のぶ)せりの類とあらば、あとあとの詮議も厳しゅ~はござるまい。がしかし、前夜一人斬り殺されておる所へ今宵まいって、また寝ておる者がござろぉかな?■あのあたりは俗に申す長町裏なぞも近い、宿無しどもが入れ代わり立ち代わり塒(ねぐら)を求めてまいる所でござる。今宵も一人ぐらいは臥せっておるかと存ずる●しからば今宵…。ご他言はご無用でござる。
昔の侍っちゅうんは無茶なもんで、乞食の命なんか何ぁんとも思てしまへんねやなぁ。用意をして南へやってまいりました。もぉ夜が更けております。人通りは無い。来てみると、やっぱり薦を被って一人乞食が寝てる。
●ほほぉ、夜前ここにて一人(いちにん)斬り殺されておるに、また寝ておるとは、よくよく命冥加に離れしやつ…。こりゃ、寝耳ながらによく承れ。
その方、生きて甲斐ある命ならば、かかる無益な殺生はいたさんが、生きて甲斐無きその方の境涯、亡きあとの回向は必ず手厚く弔ぉてつかわす。身が試しものとなれっ。
バ~ッと斬り付けますと、乞食が薦をパ~ンと跳ねのけて……
▲どいつやい、毎晩まいばんどつきに来るのは?(【上方落語メモ第2集】その77「試し斬り」より)

庶民はどっこい生きている!