2010-02-15

アニメーションの力

二つの短編アニメーション映画を観た。

一つは、アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞したオランダのアニメ作家・マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督「岸辺のふたり(原題:Father and Daughter)」(2000年)。上映時間が8分間の中に一人の女性の一生を凝縮してしまうという離れ業をやってのける!傑作!
父親に連れられ、川の岸辺へやってきた幼い少女。しかし父は、自分を置いてボートに乗って去ってしまった。その日から、雨の日も、強い風の日も、少女は父の帰りを待って岸辺にやってくる。やがて少女は成長し、恋をして、妻となり家族を持つ。過ぎ行く日々の中、彼女は岸辺の道を通り過ぎるたびに立ちどまり、父の面影に思いをはせる。いつの間にか彼女は、父の年齢を越えて老女となっていた。老女は岸辺に立ち、今は水も干上って草原となった窪地へ下りていくと・・・。

もう一本が、加藤久仁生監督「つみきのいえ(仏題:La maison en petits cubes)」(2008年)。上演時間12分余り。2008年6月にフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭でアヌシー・クリスタル賞(最高賞)を受賞。2009年2月、第81回アカデミー賞において短編アニメ映画賞を受賞した作品。これまた人生を凝縮した傑作。
積み木を積み上げたような家に住む老人。床に開けた扉を開けて釣りを初める。実はこの家は海の中に建っていて、老人の住む部屋は最上階。その下の全体は水の中なのだ。意識下の記憶を象徴しているのだろうか。老人は潜水夫を着て、階下の部屋を訪ねる。忘れていた記憶を辿る旅。その部屋の一つひとつには、かつて老人が過ごした過去の記憶が詰まっているのだった・・・。

映像と音楽だけでここまで深い表現ができるか、と感動することしきり。多義的なので、さまざまな思いを刺激される。余りに切なく感涙を禁じえない。これに比べると「崖の上のポニョ」は残念ながらいささか薄っぺらで「駄作」と言わざるを得ないなぁ。少なくとも冒頭の導入部分を除いては・・・。