「原則に従って生きる」ということ
加藤周一自選集第9巻の1998年の章に、作家・中村真一郎についての文章が4つ掲載されている。すなわち、「中村真一郎あれこれ」、「最後の日」、「『前衛』ということ」それに「中村真一郎、白井健三郎、そして駒場」である。前年の1997年12月25日に中村さんが亡くなったということがあった。加藤さんは中村さんの死い立会っている。「最後の日」とう文章にある通り。「中村のいない世界は、私にとって、彼がいた時の世界と同じではなかった」と記している。「中村真一郎は漫然と生きたのではなく、ある種の原則に従って生きていた」と。「中村真一郎あれこれ」という文章でも、「かくして戦後日本文学の『前衛』は原則に従って生き、原則に従って書いた。それは尊敬に値することである。」と書いた。「原則に従って生きた」のは、中村真一郎だけではない。そう書いた加藤周一さんもまた、見事に、原則に従って生きた、と思う。今日、DVD「加藤周一さん、九条を語る」が届く。不覚にもこれを見ながら、涙を止めることができなかった。失ったものの大きさを改めて想った次第。