永井荷風の小説「すみだ川」に題材をとった同名の「すみだ川」という歌がある。もともとは、昭和十二年(1937)に、ポリドールのドル箱歌手だった東海林太郎の専属3周年を記念して作られたものだった。島倉千代子が歌うこの「すみだ川」が何といっても絶品。YouTubeには何本か違うバージョンがアップされてんだけど、昭和62年8月28日に放送された「にっぽんの歌」でのさらっとした歌唱は非の打ち所が無い。まさに珠玉の逸品。残念なのは、フルバージョンじゃなく、時間の関係か、3番が欠けていること。
すみだ川
作詞 佐藤惣之助
作曲 山田栄一
歌手 東海林太郎
台詞 田中絹代
銀杏がえしに黒襦子かけて
泣いて別れたすみだ川
思い出します観音さまの
秋の日ぐれの鐘の声
(せりふ)
あヽそてうだったわね
あなたが二十歳わたしが十七の時よ
いつも清元のお稽古から帰って来るとあなたは竹谷の渡し場で待っていてくれたわね
そして二人の姿が水にうつるのを眺めながらニッコリ笑って淋しく別れた
本当にはかない恋だったわね
娘心の仲見世歩く
春を待つ夜の歳の市
更けりゃ泣けます今戸の空に
幼馴染のお月様
(せりふ)
あれからあたしが芸者に出たものだからあなたは逢ってくれないし
いつも観音様へお詣りする度に廻り道して
なつかしい墨田のほとりを歩きながら一人で泣いていたの
でももう泣きますまい
恋しい恋しいと思っていた初恋のあなたに逢えたんですもの
今年はきっときっと嬉しい春を迎えますわ
都鳥さえ一羽じゃ飛ばぬ
むかしこいしい水の面
逢えば溶けます涙の胸に
河岸の柳も春の雪
因みに、フルヴァージョン。