以前、「トラ・トラ・トラ」での黒澤監督解任問題の本「黒澤明vs.ハリウッド」を読んだ関係で、「海ゆかば」を繰り返し聴いた。今度「東京だョおっ母さん」をこれでもか、と繰り返し聴いた。「歌」が感情にフックするその強さをあらためて感じた。その点に関していいえば「海ゆかば」なんざぁ、傑作だね。それ故に、逆に、吐き気がしてくるって人がいてもおかしくない。要するに、理屈抜きで感情に作用するわけだ。単純な右翼が自己陶酔する所以だ。狡猾な為政者は、しかし、それを利用する。怖いですねぇ。因みに、実は「海ゆかば」には二つある。一つは、明治時代に東儀季芳が作曲した雅楽の曲、二つは、右翼の街宣車ががなっている昭和時代になって信時潔が作曲したやつ。前者は今でも自衛隊が使っているらしいが一般人が聴くのはまれ。
「狡猾な為政者は、しかし、それを利用する。」で思い出した。「In the Shadow of the Moon(2007)」というドキュメンタリ映画がある。人類が月に到達したその経過を実際の飛行士のインタビューと当時の映像を織り交ぜて描いた作品。その中で、驚愕すべき、というか当然かもしれないが、アポロ11号の面々が月に到達し、しかし、その月からの帰還に失敗したという想定のもとに、当時のニクソン大統領が国民向けに放送するメッセージを実際に作っていたという事実だ。「彼らは、月に永遠に眠っている」とかなんとか、実写フィルムが映し出される。冷酷なものだなぁ、権力者というものは。聞くところによると、自衛隊がイラクに派遣されたとき、戦死者が出ることを想定し、公式に弔う儀式の予行練習が秘密裏に行われたということだ。