それが五十嵐と仕事上で交わした最後の言葉であった。
寂しすぎますよ、と私は答えた。
いや、寂しい人は寂しい絵を見て、そこに自分の心を見て癒されるんです。寂しい人が自分の心を隠すために、にぎやかな絵を飾ったりするのはだめですよ。逆に寂しくなるばっかりですから。
そうかも知れないなと思った。(藤原新也著「夏のかたみ/コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」より)
ニコラ・ド・スタールNocolas de Staël(January 5, 1914, Saint Petersburg – March 16, 1955, Antibes, French nationality, of Russian origin)という画家を上の文章で始めて知った。
ド・スタールの描く絵は明るく澄みわたっていたが、いつもその明るさの背後にはしめつけられるような寂寥感が漂っていた。そしてそれらの絵が予告していたかのように、彼は若くして自ら命を断つ。(同上)
いつの日か、ド・スタールの実物をこの眼で見てみたい。